Round7 Hiromasa Ryusuke vs. Kawakita Shiro

By Syouyama"傍観者"Youhei

もはや現実味を帯びるなどというレベルではない。
このラインともなるとまぐれ勝ちなどではなく、正真正銘の強豪VS強豪の試合だ。
この試合に勝った方が、紛れも無くトップ8への権利を手にできるのだ。
そんな極限状況での緊張感をこのページに乗せ、そのままにお届けしよう。

そこで本ラウンドにかける意気込みをそのまま二人に聞いてみた。
帰ってきた言葉は…。

川北「実は今回のデッキはフルFOILなんですよね。それじゃあ…FOILは引きを強くすると言っておきますよ!」

オカルトではあるが、このゲームにおいては運が占める要素も決して少なくないだけに何故か川北の言葉には説得力がある。
FOILへの愛が彼を6−0ラインへと導いたのだろうか。

対する広政は先の高校選手権の活躍も記憶に新しい、かの筑駒付属高の一員である。
若干高校一年生でありながら、若き力と勢いを以ってここまで駆け上がってきた実力派である。
第3世代ならぬ、「第4世代」代表の彼の言はこうだ。

「メタ内に入ってるデッキは絶対使いません!今回のデッキはラブニカ環境の時からずっと暖めてきました!」

実力派にしてメタ外のデッキを使いこなすという事実が彼の実力を裏付けている。

何よりもFOILを愛する男、川北 VS 地雷デッキを手足のように使いこなす若き新星、広政。
全勝対決にして異色の戦いが今、幕を開ける。



Game 1
先攻は広政。

土地5枚・《信仰の足枷/Faith's Fetters》・《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination》といった手札を少考の後にキープ。
一見マリガンハンドに見えなくも無いが、そこは前環境から使いこなす広政。
このデッキにかけては何よりも熟知しているはずだ。或いは判断が甘いのは筆者の方なのかもしれない。

《森/Forest》から《オルゾフの聖堂/Orzhov Basilica》を置く立ち上がり。
対する川北は《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast》《神聖なる泉/Hallowed Fountain》から《シミックの印鑑/Simic Signet》をキャストしてターンを返した。

なかなかに珍しい光景であることはここまでの僅かな情報からもおわかり頂けるだろう。
異色なのはプレイヤーだけではない、デッキもだ。

後にわかることではあるが、川北のデッキもなかなかに面白い動きを見せる。
彼に言わせるならば「伊達に光ってない」というやつであろうか。

事実上のファーストアクションは広政の3ターン目の《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》。
川北はこれを受け入れ、返すターンに《寺院の庭/Temple Garden》をタップインしつつ《宮廷の軽騎兵/Court Hussar》を繰り出す。


川北の青マナを見て、いわゆる「クロックパーミ」の匂いを感じとったのか、広政はこの隙にと《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch(RAV)》をプレイグラウンドに送り出す。
アタッカーを用意すると同時に失ったライフを補う良いカードだ。まさにこのデッキのためにあるようなカードといえるだろう。

それを見て川北は渋い顔。どうやら単に《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch(RAV)》がきついだけではなく、引きも思わしくないようだ。
複数の青マナを含む土地を5枚立てたまま苛立たしそうにエンドを宣言する。

ならば、と広政は攻め立てる。
《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》をレッドゾーンに送り出し、少し遅いビートダウンが始まる。
これにより川北のライフは14にまで減少。広政は攻めの手を緩めない。
さらに場に2体目の《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》を追加してエンド。
これには少し悩むが結局スルーされる。

「第4世代」、広政



ONS限定構築で強かった



川北はまずは広政のターンエンドに《撤廃/Repeal》で《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》をバウンスし…。
そして放たれる《神の怒り/Wrath of God》によって《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》は2体まとめて退場することとなる。

これで場は平らに戻った。だがまだ終わらない。
広政とてこれが完全に想定外だったわけではないだろう。
除去されるようならまた展開するまでだ。

《神の怒り/Wrath of God》にもめげず、広政は攻めの一手を崩さない。
先ほど戻された《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》をキャストし、一度は《差し戻し/Remand》されるがギリギリ残した3マナでこれを再び通すことに成功する。

川北は《宮廷の軽騎兵/Court Hussar》を追加するが、有効牌を引き込めなかったようで忌々しそうにターンを返すのみ。

どうしても今のうちに攻めておきたいところだが…。
広政は《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》のエクストラドローによってアドバンテージ差を広げつつもアタッカーを用意できない様子。
仕方なく、手札にいる唯一の生物である《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination》をフルタップでプレイするがこれには案の定《差し戻し/Remand》。

CIP能力を持つ生物と相性◎
川北の苛立ちは段々と募っているようだ。
自分の引きを呪うかのようにテーブルを叩き、そしてターンを返す。

広政は再び《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination》をプレイ。
ここは先程のドローの恩恵を受けて《神秘の蛇/Mystic Snake》が迎え撃つ。
《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination》はカウンターされ、墓地に置かれることとなる。

こうなると盤面は複雑になってくる。

川北は《神秘の蛇/Mystic Snake》で控えめにアタックするがそこには広政の手札で腐っていた《糾弾/Condemn》が。
悩んだ末、これに川北は《一瞬の瞬き/Momentary Blink》。
まさにこのカードこそがゲームを複雑にさせる要因であるといえよう。

何しろ場に《神秘の蛇/Mystic Snake》がいればこのカードは擬似《対抗呪文/Counterspell》となりうる。
条件付ではあるが《対抗呪文/Counterspell》がシングルシンボルでフラッシュバックできればそれは弱いはずがないだろう。

他にも《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》を対象にプレイしてライフゲインをしたりと色々悪さができる。
まさにギミック満載の面白デッキである。

さて、地上が固められてしまったら空から殴れば良いだけの話。
そう言わんばかりに広政は黒い《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》ともいうべき《骸骨の吸血鬼/Skeletal Vampire》をキャスト。
勿論川北の場にある《神秘の蛇/Mystic Snake》と墓地にある《一瞬の瞬き/Momentary Blink》を確認したうえで、の話だ。

川北は《神秘の蛇/Mystic Snake》を対象に《一瞬の瞬き/Momentary Blink》をプレイするが。
それも読み切っていた広政は重ねて《神秘の蛇/Mystic Snake》に《屈辱/Mortify》を打ち込むことによって鮮やかにかわしてみせた。

ならば、と川北は再び《神の怒り/Wrath of God》を放ち、盤面をリセット。
まさに目の回るような攻防戦である。

しかし状況は一転。

泥試合になることを感じ取ったか、ここで川北はジャッジに残り時間を尋ね、後に投了を宣言した。
勝機が無いと判断し、次の試合に賭けたのであろうか。

そして我々はそうまでして川北が次ラウンドに託した望みを垣間見るべく、次ラウンドへと視点を移す。


広政 1-0 川北


Game 2
二人とも手札を一瞥するなり即座に「やります」、と宣言。
ともなればあとは余計な事は抜きにして、デッキ同士のポテンシャルのぶつかり合いとなってくる。

川北は森から《都市の樹、ヴィトゥ=ガジー》を経由して、《シミックの印鑑/Simic Signet》を置く。
広政は土地を並べるのみで淡々とターンを返すのみである。

さらに川北は《アゾリウスの大法官庁/Azorius Chancery》をセットするのみでゴー。
二人とも手札は余程、高コストのパワーカードで溢れているのだろうか。

広政は3ターン目にして《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》をプレイするがこれはお決まりの《差し戻し/Remand》。
対する川北は4マナを立ててエンド。意味深だ。実に怪しい気配が漂う。

広政はお構いなしに《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》を再度プレイするが、ここには案の定《神秘の蛇/Mystic Snake》が。
優位を崩すまいと川北はこの隙に《交錯の混乱/Muddle the Mixture》を変成し、キーカードである《一瞬の瞬き/Momentary Blink》を手札に。

《一瞬の瞬き/Momentary Blink》のための白マナが無いことを確認し、《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》をキャストした広政だが
川北は狙い済ましたかのようにこれに《差し戻し/Remand》を打ち込む。徐々に川北がペースを握り始めているのが伺える。

ようやく《神秘の蛇/Mystic Snake》が殴り始めるのだが、ここには《糾弾/Condemn》が。
1本目の試合を想起させる展開だ。しかし川北は手札からの2枚目の《一瞬の瞬き/Momentary Blink》によってこれに対処。
フラッシュバックの4マナこそ残っていないものの、広政はますます動きづらくなった。

返す広政、とにかく殴られっぱなしでは割に合わない。
首を傾げつつ《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》をプレイするがこれがうっかり通ってしまい、広政はほっと一安心。

さて、今の川北にとってこの4/4が実に堅い。

《神秘の蛇/Mystic Snake》が完全に止まってしまうのはもちろん、彼のデッキには航空勢力が存在しないことが悩みの種となっているようだ。
さらに気合を入れてドローするが引きは応えず。FOILの女神様もどこへやら、そりゃあため息も止まらないってもんです。

《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》によっていたずらに増えるだけのライフを有効活用すべく
広政は引いてきた《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》を出さんとするが…。さらにここに川北の《神秘の蛇/Mystic Snake》が。

着実にアドバンテージを取ってはいる川北が一見優勢に見えるが、川北は広政のコントロールする
たった1体の《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》が邪魔で思うように動けないでいる。
それは単なる2/2が1体から2体に増えたところで同じことである。

ため息を上書き保存しながらただただドローゴーを繰り返す川北。
先程からその手中は筆者も気になっていたところであるが…。

ついに広政の《酷評/Castigate》によってその超高カロリーハンドが白日の下にさらされることとなる。

《熟慮/Think Twice》
《一瞬の瞬き/Momentary Blink》
《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》
《解呪/Disenchant》
《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》
《撤廃/Repeal》
《神の怒り/Wrath of God》

まさになんだこりゃ。という感じ。
どうやら3枚目の青マナが引けずに《ザルファーの魔道士、テフェリー》を出すタイミングを掴めずにいたようである。

広政、熟考の末に《一瞬の瞬き/Momentary Blink》をリムーブし、後に《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination》を素でプレイする。
と、これは既に墓地にある《一瞬の瞬き/Momentary Blink》と場にある《神秘の蛇/Mystic Snake》の組み合わせで弾かれる。

しばらくお互い決め手を引けずにドローゴーが続く。
2枚の《都市の樹、ヴィトゥ=ガジー/Vitu-Ghazi, the City-Tree》を有する広政だが、気づけば手札は《神の怒り/Wrath of God》と《骸骨の吸血鬼/Skeletal Vampire》の2枚のみ。
さながら「縦のシナジーの総合商社」ともいうべき広政のデッキでこの状況は珍しい。川北にひとつひとつ丁寧に対処された結果だろうか。

流れは明らかに川北にあるのだが…引けども引けども土地ばかりしか見えない。
もうこれで何連続土地を引いただろう。
制限しすぎ!

《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》を除去せずして突破するには…物量差に物を言わせるしかない。
あまりスマートなやり方とは言えないが、引きに恵まれないのでは行かざるを得ないという判断だろうか。

かくして川北は手札に溜め込んでいた生物を次々とプレイグラウンドに送り出す。
遅すぎる3枚目の青マナと併せ、テフェリーまでも追加し、フルアタックの時を今か今かと伺うが…。

広政が何気なくプレイするは《骸骨の吸血鬼/Skeletal Vampire》!
これを出されたら戦闘では全く勝ち目がなくなってしまう川北。
繰り返すが、彼のデッキには航空戦力が存在しないである。

わかりやすく言い換えれば「飛行だけは勘弁」!

必死でカウンターし、なんとかさばくものの…。
広政の狙いは別のところにあったのだ。

川北がフルタップした隙に吹き荒れるのはもっと勘弁な《神の怒り/Wrath of God》。
アタッカーを失ってしまったのはお互い様であるが、1本取っている広政は余裕のエンド宣言。
彼にしてみればこのゲームに敗北さえしなければ良いのだ。

結局この《神の怒り/Wrath of God》が完全に流れを作り、そのまま追加の5ターンに入っても川北は勝機を見出せずに無念の敗北を喫することとなった。
結果論ではあるが、初戦の投了が仇を為す形となってしまった。

そして「若き新星」広政は決勝トーナメントへと駒を進める。


広政 2-0 川北

Result: 広政龍亮 WIN!